遠い昔からの物語

これで、間宮中尉と我が家との縁は切れた、と思った。

そしたら驚いたことに、先方はわたしを、と云い出した。

もともと間宮中尉自身は初めから、姉ではなくわたしを望んでいた、というではないか。

頼まれて急遽渡した姉の写真は、今年の正月に写したもので、隣にはおまけのようにわたしが写っていた。

父も母も、きっと向こうが気を遣ってのことだろうと思い、

「春に女学校を出よったばかりのこがぁな子が軍人さんの(おごう)さんでは、任に()うとらんけぇのう」

と云って、やんわりと断ろうとした。

ところが、先方は引き下がらなかった。

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