遠い昔からの物語

◇第四話◇


「……どしたん」

おれの着流しの帯を締め終えた廣子が、おれの顔をまっすぐ見上げて云った。

おれは、廣子の頬を両手ですっぽりと包んだ。

見合いのときも、結納のときも、廣子は俯いてばかりで、こんなふうにおれを見てはくれなかった。

迷ったが、廣子をここに呼んだのは正しかった。

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