遠い昔からの物語

「……おれもその歌、好きじゃ。特に最後の歌詞が(こんま)い時分から一番(いっちゃん)好きじゃったのう」

廣子から唇を離したおれはそう云って、
「〽︎ ぃい~でぇ~大船ぇを乗〜り出〜してぇ~」
と歌ってみた。

てっきり、廣子も一緒に歌ってくれるのかと思えば、

「……(はよ)う、これを仕上げてしまわんといけんわ」

と口の中でもごもご云って、繕い物を再開した。

歌詞を知らないからだと思ったおれは、

「〽︎ い〜ざ、軍艦にぃ乗〜り組みてぇ~
我は(まも)らん~海の国ぃ~」

と、歌い切った。


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*こんまい ー 幼い・小さい
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