遠い昔からの物語

海軍の上官が「早く妻を娶れ」と口を酸っぱくして云うのが、身に沁みてわかった。

男は、身体(からだ)を張って守るものがあってこそ、初めて本当の仕事ができる。

自分のような、命を懸けて闘う仕事は猶更(なおさら)だ。

今まで、自分が軍人としていかに曖昧に「殉国」というものを考えていたかを思い知らされた。

海軍兵学校(海兵)に入学したときから、おれはいつでも命を捨てる覚悟はできていると思っていたが、それは甘い感傷でしかなかった。

「廣子」というはっきりとした守るべき存在ができて、おれはやっと一人前の帝国海軍軍人として任務に打ち込めそうだ。

今こそ、胸を張って堂々と、おれは云える。

廣子を守るために、国を護る。

そのためになら、いつでも潔く、命を捧げてやろうと……

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