*Dear……*~ハイスペック男子と甘いLove Storyを~
でも数秒後、愛しさ溢れる声で名を呼ばれ、つい素直に振り向くと卵焼きが目の前に。

つい反射的にパクモグすると、先輩は嬉しそうに私の頭を撫でた。

この薄暗闇が、すっかり明るくなりそうな笑みに、私も自然と笑みが溢れる。

きっと私達ふたり、端から見れば幸せな恋人同士……。

それを現実にしたい衝動にかられた私は、ほんの数ミリでもふたりの距離を近付けたくて、ポヤン……としながらも先輩を真っ直ぐ見つめ続ける。

でも先輩の表情から、全くこの切ない想いは伝わっていないとわかる。


「唐揚げは、消化に悪いから今度。……俺もずっとチーフでも後輩でもない美愛に会いたかった。だから、『海斗さんに会いたかった』って言われて嬉しかった。すっげ嬉しかった。……もうふたりの時は、先輩禁止」


言い終わると頭をポンポンして微笑む先輩に、幾つかの想いが交差する。

……私、そんなこと言ったの?

完全に無意識の本音だ。

恥ずかし……。

でも恥ずかしさよりも嬉しいって言われたことの方が嬉しくて堪らない。

でも……先輩禁止って……?
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