意地悪な彼ととろ甘オフィス
「普通ですよ。でも、なんでだか浮気されることが多くて」
「浮気?」
「付き合って少しすると、私に内緒で合コン行ってそこで知り合った女の子と連絡とりあってたりで……考えてみると、みんなそんな感じでした」
付き合った人数は三人。
全部、告白されて押し切られて始まった。
けれど、付き合い出して二ヶ月も経たないうちに、三人とも私以外の女の子と連絡を密に取り合っているのが私にバレて終わった。
友達に話したら、〝男なんてそんなもん〟だっていうし、そうなのかって片付けていたけれど……三人が三人ともって、今思えば少し引っかかる。
「へー。日向さんって男運ないんだね。世の中もっとまともな男もいるよ。俺みたいな。俺みたいな! 大事なことだから二回言っといた」
台詞には不似合いの、下心なんてこれっぽっちもなさそうな笑顔を向けられ、思わずふふっと笑ってしまう。
「ほんと……男運悪いんでしょうね、私」
初恋相手から、ずっと。
ぽそりとこぼした独り言は誰にも拾われることはなかった。
そのうちに須永先輩がとりあえずこのお店を出ようと提案する。
時間は二十二時。三時間もこのお店にいたのか……と少し驚きながら会費を渡し外に出る。
十月の空には綺麗な星が浮かんでいて、頬を撫でる風は冷たい。
つい二週間ほど前までは、残暑って言葉には収まりきらないような暑さだったのに、もうすっかり秋の空気だ。
来月になれば気温がどんどん下がり出すだろうし、そう考えると秋って短い。
そのうちに春夏冬になっちゃうんじゃないかなぁ……なんて思っていると、会計を済まし外に出てきた須永先輩が二次会参加者に挙手を求める。
場所は駅前のカラオケらしい。
「はぁい」と手を上げる女性社員を少し離れた場所から眺めていると、隣に立っている山下さんに「日向さんは行かないの?」と話しかけられる。