意地悪な彼ととろ甘オフィス
「金曜日、合コンのあとどうなった? ほら、日向ってばしっかり成瀬さんに持ち帰られてたじゃない?」
月曜日、朝一で須永先輩が〝このこのー〟っというノリで肘でぐりぐりしてくる。
隣の椅子を引いた須永先輩以外、まだ総務課に出勤してきた社員はいない。
本当なら、一番後輩である古館さんがパソコンなどの機器の立ち上げを行う決まりなのだけど、ここ数ヶ月は私が担当している。
なぜなら古館さんはいつも遅刻ギリギリだから。
『私が使う路線、いつも混んでて~』と、課長にネコナデ声で説明という名のいいわけをしていたけれど、隣で須永先輩が『混んでたから遅刻っておかしくない?』と呆れて笑っていた。
ちなみに、五十代の課長は甘え上手な古館さんに甘いため『そうなのか。だったら仕方ないなぁ』と強く出られず、結局、そのしわ寄せは私に来ている。
作業として、機器の立ち上げ作業くらいなんでもないけれど、なんとなく釈然としないのは私も須永先輩も、他の社員も同じようだった。
「あのあとさぁ、二次会行ったじゃない? そこで古館さんずっとグチグチ言ってたんだから。〝成瀬さんと絶対にうまくいくと思ったのに~〟って。そもそも、私は古館さんを飲み会に誘ってないのに、勝手に聞きつけて来た時点でおかしくない?」
「え……てっきり先輩が誘ったんだと思ってました」
「誘わないよ。私、仕事きちんとしない子嫌いだもん。要領が悪いだとかなら仕方ないけど、要領よくサボって他のひとに仕事押し付けるとかは好きじゃない」
「……まぁ、言ってる意味はわかります」
でも、ハッキリとは言えずにいると、先輩は「でしょ?」と強い眼差しを向ける。
少しご立腹のようだった。