意地悪な彼ととろ甘オフィス


「だから飲み会、乗り気じゃなかったのね」
「幼なじみって言っても、仲良かったのは小さい頃だけですけど」
「ああ、でもそんな感じ。成瀬さんって、ちょっと性格が難しそうだもんね」

意外な返しに、須永先輩を見る。

「……そうですか? あの人、愛想いいほうですけど……」

私に対してはツンツンしているけれど、それ以外の人には極めて愛想がいいし好印象だと思うけれど……。

須永先輩は「んー」と難しい顔をして腕組みをする。

「適当に交わされてる感がすごいっていうか、まともに相手する気ないんだなっていうのをこっちが悟るように仕向けてる感じなのよね。
笑顔浮かべながら〝興味ないから諦めてね〟って無言で伝えてきてる感じ。あまりいい性格ではないような気もするし。……あ、ここだけの話よ?」

最後だけコソッとしたボリュームで言われても、もう遅い。

でもそれは指摘せずに「まぁ、性格の悪さは否定しないです」と笑うと、須永先輩はじーっと私を見て首を傾げた。

「……もしかしてだけど。ふたりって過去になにかあったの?」

鋭い指摘にギクッとしながらも、平然を装って首を振る。

「なにも」
「ははーん。あったのね。わかりやす!」

「……『ははーん』とか言うひと、初めて見ました。その前に、今日はそのテンションについていくの大変なんでちょっと勘弁してください」

出力の終わったプリンタが待機状態に移る。

それを確認してから、排出された紙をまとめトントンと揃えていると「なによ、付き合い悪いなー」と文句を言っていた先輩が「あれ?」と顔を覗きこんできた。

「日向、本当に顔色悪いわね。大丈夫?」

今までの態度をガラリと変え、瞳に心配を浮かべる先輩ににこりと笑顔を作る。

「ちょっと生理痛がひどくて。でも大丈夫です」
「ああ、毎月重くて大変そうだものね」


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