意地悪な彼ととろ甘オフィス


「どうしたら、最悪って言われないで、気持ちを伝えられるの……? どうしたら私、迷惑じゃない? 響哉くんを好きでいちゃダメ……?」

自分でも気づかないうちに、涙が溢れていた。

呼吸がおかしくなり、ひっくと喉が鳴る。

「あー……泣くなって。なにがどうなってんだよ……」

私の背中を、響哉くんはまだわけがわからないって顔をしてさすっていた。
そんな響哉くんに、寧々さんが説明する。

「中三のバレンタイン、響哉にチョコ渡そうとして断られたって言ってるのよ。チョコ渡そうとしたら『最悪』って言われたって。この子、ずっと告白の返事に『最悪』って言われたと思ってるみたい」
「は? そんなわけ……」

本当にありえない、ってトーンで話し出した響哉くんだったけど、そのうちに思い当たったみたいだった。

「あ……あの時……?」

もしかしてって感じの顔だった。

混乱しているみたいなのに、響哉くんの手は私の背中をさすってくれていた。

誰かお客さんが帰っていく。
「勘定はつけといてー」という男性客に「はぁい。またねー」と答えた寧々さんが、こっちを向いてため息をつく。

「やっぱりなにかすれ違いがあったのね。響哉がこの子からのチョコを断るなんておかしいと思ったのよ」

頬に手をあて息をつく様子が色っぽい。

響哉くんは私の涙が止まったことを確認すると、タオルかなにかで私の頬に残った涙をポンポンと拭いてくれる。
そうしながらも、寧々さんとの会話は続けていた。


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