意地悪な彼ととろ甘オフィス
家についてからはすごかった。
酔いのまだ残る私に、響哉くんは一から全部を説明してくれた。
膝を付け合せた状態で三十分。
正座した足は痺れきっていた。
「俺は、物心ついたとき……いや、もしかしたらそれよりも前からずっと明日香が好きだった。ずっと一緒にいたし明日香もきっと同じ気持ちだろうって勝手に思ってた。
だって明日香、俺が隣にいても嫌がらなかったし。なのに、中二の秋に〝ただの幼なじみだって周りに言え〟って明日香に言われて……勝手に裏切られた気持ちになった」
響哉くんは、淡々と……でも時々苦しそうに話してくれた。
両想いだと思ってたのに、そんな私からそう言われてショックだったこと。そのショックからどう接していいのかわからなくなって、距離ができたこと。
そんななか、バレンタインデーに私から呼び出されて嬉しかったのに、カミラ先生から頼まれただけだと早とちりして〝最悪〟って言ったこと。
いつかの響哉くんの言葉が蘇る。
『……それ、本気で言ってんの?』
『意地悪とか、期待とか、そんなの明日香のほう……いや、なんでもない』
私が、期待させてガッカリさせておもしろい?って怒ったときに、響哉くんはそう言った。
あれは、このことだったんだ。
「俺の気持ちなんかもうわかってるくせに、他の女からのチョコ渡すって……あー、もう可能性ねぇじゃんって。なんとも思われてないんだって実感して、落ち込んだ」
力なく笑った響哉くんに「どうして、意地悪な態度ばかりとるようになったの?」と聞くと「あー……それは」とバツが悪そうに笑われる。
「どんな態度とれば好きになってもらえるのかわからなくなってさ。今までどおりじゃダメだってことだし。で、明日香の性格からして意地の悪い態度とったら俺のこと気にするようになるんじゃないかって思って……そうしたんだけど」