意地悪な彼ととろ甘オフィス


「変な期待もたせて長引かせる方がよっぽど可哀想じゃん。……ああ、そうだ。明日香の後輩の……古館さんだっけ? その子からも渡された」

思い出したように言われ、思わず「えっ」と驚くと、響哉くんは私を安心させるように笑う。

「大丈夫。その子だけはキツめに断っといたから。『仕事ができる女の子が好きだから』って」

その断り文句は、古館さんにはたしかにキツいかもしれない。
もっとも彼女は自分でそのことには気付いていないかもしれないけれど……と考えていると、響哉くんが続ける。

「そしたら、『仕事得意です』って言ってきたから『あれで? そう思ってるのアンタだけじゃない?』って返したら呆然としちゃってたけど。総務課の課長は、あれであの子になにも注意しないの?」

やや呆れたように言う響哉くんには「色々あるんだよ」とだけ答えておく。

憧れの響哉くんにそんなふうに言われてしまったら、さすがに古館さんはショックだろう。
月曜日〝なんの仕事も手につきません〟状態で、いつも以上に仕事してくれなかったら困るな……と考えていると、響哉くんが寧々さんの手元を見て言う。

「寧々さんが食ってるのって、もしかして明日香から……」
「そうよー。わざわざお酒入りのを選んできてくれたの。可愛いわよねぇ……って。なによ、そんな怖い顔して。私相手に妬いたってしょうがないでしょう」

「そうだけど……だって、寧々さん、身体は男……いってぇっ」

これは、ぺしっと頭を叩かれても仕方ない。
むしろグーじゃなかっただけ寧々さんは優しい。

「まぁ、そんなに言うならわけてあげてもいいけど」
「えっ」
「ほら。受け取れるかしら?」

挑発的な笑みを浮かべた寧々さんが、オレンジのチョコを口にくわえる。

それを響哉くんにも口でとれってことで……つまりは、ポッキーゲームみたいな、そういう――。



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