意地悪な彼ととろ甘オフィス


そのまま連れ込まれたのは、〝Nene〟からほど近いホテルだった。
名の知れたホテルは、高級ホテルといっても問題ない。

一度泊まったっていう須永先輩が、『すごいよ! 高いけど!』と興奮気味に話していたのを思い出す。

こんな場所に入ってきちゃって大丈夫だろうかと、周りを見ながらオロオロしていると、響哉くんはさっさとフロントを離れ、またさっさとエレベーターに乗り込む。

その手にはカードキーが持たれてるし、どうやらチェックインしたらしいけど……あまりにあっという間すぎて混乱していた。

「響哉くん、ここ……」
「来ようと思ってあらかじめ予約してた」
「泊ま……」
「明日土曜だし、泊まっても問題ないだろ。あとでおばさんに電話しといて」

全部言い切る前に、ぴしゃっと言葉で抑えつけられてしまう。

別に問題はないけれど……。
気になるのは、早口にそれだけ言ったまま、黙り込んでしまった響哉くんだ。

その横顔はどうやら怒っているようにも見えるけれど……なにがきっかけで怒らせてしまったのかがわからない。

とりあえず、ふたりきりの空間になれば話せるだろうか。
そんな風に考えていると、エレベーターが止まる。

二十階という数字に少し驚いていると、また腕を引かれ部屋の前まで連れて行かれた。

フロントにも、エレベーター内にも、そしてこの廊下にも。あらゆるところに高級感が散りばめられている気がする。
ガチャリと開いたドア。押し込まれるように入れられた部屋に絶句する。



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