意地悪な彼ととろ甘オフィス


白を基調とした壁と天井に、床はベージュ色のタイルが敷き詰められている。向かいの壁は全面窓ガラスになっていて、夜景が見えていた。

その手前には大きなダブルベッドがあり、頭側だけチャコールグレイの壁紙が立ち上がっている。

窓枠やベッドの両サイドにある間接照明が、部屋をとてもムーディーに照らしていた。

ただ感動してしまい呆然としている私の手を引いた響哉くんが、部屋のなかへと進む。

そして、持っていた荷物をベッド脇にあるソファーに放り投げると、近くの壁にそのまま私を押し付けた。

乱暴な行為に、響哉くんが怒っていたことを思い出す。
向かい合った響哉くんは「なに。さっきの」と短く問う。

「さっきのって、なにが?」
「寧々さんにしたやつ」
「え……ああ、オレンジチョコ?」
「あんなの俺の前でして、許されると思った? ひどくされてぇの?」

なんだ。そんなことで怒ってたのか……と拍子抜けしながら「だって」と弁解する。

「寧々さん、女性だし」
「男だろ」
「身体はそうかもしれないけど、中身は女性でしょ。むしろ、普通の女性よりもずっと女性らしいと思う。……だから、響哉くんにしてほしくなかったんだよ」

むっと口を尖らせると、響哉くんは複雑そうな顔をしてから「いや……でも……」と納得していない声を出す。

でも、その瞳からはもう怒りは消えているみたいだった。

じっと見ていると、響哉くんは根負けしたみたいに「わかった。でも、もうしないで」と言い、私をチラッと見た。

「……で?」
「で?」
「寧々さんには渡したのに、俺にはないの?」

拗ねたような顔に、胸がきゅんと鳴る。
寧々さんのお店を出てからここまで、結構乱暴な扱いをされたのに、こんな顔されたらなにも言えない。



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