意地悪な彼ととろ甘オフィス
おまけ
野いちごのエアラブを作ろうと思ったんですけど、文字数がもうすごいアウトだったのでこちらに。
高校時代のふたりです。
***
「告白されたって? 誰そいつ。すげぇ物好きじゃん」
もう誰もいないと思っていた教室。
振り向くと、幼なじみの響哉くんが立っていた。
結構ひどいことを言われた気がするけれど、少し傷つきながらもいつものことだと聞き流す。
周りの女の子には愛想を振りまくくせに、と心のなかだけで呟いた。
「関係ないでしょ」
夕日の差し込む教室は、柔らかいオレンジ色に染まっている。
帰り支度を整え、歩き出そうとしたところで腕を掴まれる。
邪魔されて「……なに?」と顔を上げると、苛立ったような瞳が私を見ていた。
「〝日向サン〟に告白してきた男が誰かって聞いてんだけど」
強い眼差しに射抜かれてなにも言えずにいると、腕を掴んだ手に力がこもる。
わずかな痛みを感じ肩をすくませると「誰だか言えよ」と低い声で問われた。
「や、だ……」
「なんで? 付き合うから?」
「そんなんじゃ……」
「付き合って、そいつになにさせんの?」
響哉くんの視線が、私に絡まる。
「キスさせて、触らせんの?」
目、鼻、唇……と下がっていく視線に、胸が騒がしく鳴った。
逃げたいのに、逃げられない。
ドキドキうるさい心臓に気付かれたくなくて、勢いよくうつむいた。
「こ、断ったから……付き合わない」
震える声を出すと、響哉くんはしばらくしたあと「あっそ」と、今までのことなんて嘘みたいにあっさりと腕を放す。
そして長い足でスタスタと歩き、教室のドアまでいったところで、振り向かずに言う。
「じゃあね。〝日向サン〟」
ひとり残された教室で、ただ、遠ざかっていく足音と自分の心臓の音を聞いていた。
響哉くんはひどい。
気まぐれで期待させるようなことするくせに、〝日向サン〟なんてわざとらしく私を突き放す、ひどい男だ。
「嫌いに、なりたいのに……」
なんで、好きって想いが消せないんだろう――。
まだトクトクと鳴く恋心に、唇をキュッと噛みしめた。