お見合いさせられました!
愛ちゃんは身を乗り出して、私の顔をまじまじと見る。


「奏美に春がきた」

春がきたって、なんだか恥ずかしい。
高校生の恋じゃあるまいし。
私の人生がかかった一大事ですよ、愛ちゃん!


「あ~、奏美、なんかキレイになったと思ったら、ほほう、なるほどね~」

愛ちゃんは独り言をぶつぶつ言って、ひとりで納得するように頷いている。


「愛ちゃん、どうしたの?」


「私のことは気にしないで。それで、五十嵐さんと次いつ会うの?」


「へ?会わないよ。連絡先知らないし」


「どうして!?奏美、五十嵐さんの告白聞いてなんとも思わなかったの?」


「それはっ、少し嬉しかったっていうか…」


「じゃあ、どうして!?」


「だって、一歩踏み出すのが怖いっていうか…」


「そのこと、五十嵐さんに言った?踏み出すのが怖いって」

私は首を左右に振った。

エリート男子にあんなふうに真っ直ぐ気持ちを伝えられて、嬉しく思わない女の子なんていないと思う。
それでも私は一歩踏み出せない。
怖い。
だから結婚願望ゼロって宣言してバリアを張った。
そのバリアを五十嵐さんは壊そうとしている。

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