お見合いさせられました!
「ちゃんと話したほうがいいよ。五十嵐さんなら奏美をなんとかしてくれそう」


「話すって言っても、連絡先知らないし」


「あぁ、それはなんとでもなるっていうか…」

愛ちゃんは言葉を濁して曖昧に笑った。


「ちょっと守秘義務あるからさ~」

守秘義務?
なんだろう。
なんだかイヤな予感がする。


「奏美は待ってたらいいよ」

ん?
五十嵐さんと同じこと言ってる。
どういうこと?
愛ちゃんに聞こうとしたけれど、それ以上は話さないって空気がひしひしと伝わってきて諦めた。


守秘義務の意味を知ることになったのは女子会から2日後の水曜日のことだった。


毎週水曜日の始業は部署全体のミーティングで始まる。
国内事業部のフロアは、出張や直行の営業マンを除いて、多くの社員で賑わっている。

ミーティングの進行は課長や主任といった役職者が持ち回りで務める。

フロアに課長の声が響いた。


「ミーティング始めるぞ~」

部長のデスクの周りにみんな集まっていく。
現在の売上進捗状況や今後の見通し、他部署からの連絡事項などが次々と伝達されていく。

最後に部長が辞令を発表した。
それは国内事業部ではなく、海外事業部の辞令の話だった。


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