お見合いさせられました!
強気な発言とは裏腹に、あんなふうに優しくされると、そのギャップにどうしたらいいのかわからなくなる。
私が焦っている姿を五十嵐さんは楽しそうに見ていた。
ホント、意地悪だ。
けれども、そんな人に落ちてしまったのだから仕方がない。




騙されてお見合いさせられてしまったけれど。

しかも、お見合い相手は私が築き上げたバリアをいとも簡単に崩して。

気づけば、お見合い相手に落ちてしまった私。



「さてと、とりあえず仕事しようっと」

きっとフロアに戻れば、興味津々ないくつもの視線が突き刺さるんだろう。
しばらくはそんな毎日が続きそうだ。
そう思うと、ちょっとうんざりしてしまう。
無意識に右手で左手薬指に嵌まっている指輪を触っていたことに気づいた。
五十嵐さんが守ってくれている気がして、くすぐったい気持ちになる。


「虫除けじゃなくて、お守りよ」

そう呟きながら、足取り軽くフロアに向かって歩き始めた。





【終】




< 48 / 49 >

この作品をシェア

pagetop