ライアーピース
ぱっと振り返ると、
一人の男の人の後ろ姿が見えた。
カゴにはインスタントラーメンや
お惣菜が乱雑に入っている。
身長は180あるかないかくらい。
陸はもっと背が低かったはず・・・。
「陸・・・?」
そっとその後ろ姿に
声をかけると、
彼はきょろきょろと辺りを見まわす。
そうして何事もなかったかのように
ふらっとレジへ行ってしまった。
あれは、本当に陸?
名前に反応を見せたってことは、
やっぱり陸なの?
高校時代の頃の記憶が急に鮮明になる。
陸と過ごした日々も、
陸が去ってしまった日も、全部。
「陸・・・陸!!」
私がその背中を追いかけようとすると、
ふいに肩を掴まれた。
「若葉?どうかした?」
「歩夢・・・」
はっと歩夢から視線をさっきのレジへと戻すと、
そこにはもう、彼の姿は見当たらなかった。
「おい、若葉。大丈夫か!?」
気付くと私の頬には涙が伝っていた。
「佐々木が、ね・・・」
帰り道、歩夢にスーパーでの出来事を
打ち明けると、歩夢はうーんと唸った。
「本当に佐々木だったの?」
「わからないけど・・・
名前を呼んだら反応があったわ」
「若葉、忘れたのか?
あいつはもういないんだって」
「うん、そ、
そうだけどでも・・・っ」
「俺じゃダメ?まだ、
あいつが気になる?」
「・・・ううん」
そんなわけない。
私はもう、陸のことは諦めたんだから。