ライアーピース
Piece13
歩夢の突然のプロポーズから二週間。
私はまだ返事を出さずにいた。
何で?それは言わずもがな、
陸のせい。
あれからも陸は
変わることなく女の人を連れて歩いていた。
「聞いた?佐々木陸の噂」
「え~何それ」
「実はね・・・」
次第にこの広い大学内で、
陸の噂が広まるようになった。
もう何人もの女の人と寝ているらしい。
そんな噂が、嫌でも耳に入るようになった頃、
陸が声をかけてきた。
「おっ、二宮じゃん!久しぶり!」
本当に久しぶり。
だってあれから私は、
陸のことを避けるようになっていたから。
でも陸は、前ほど
忘れなくなっているのかもしれない。
遠くから私を呼ぶ陸には
何の違和感もない。
私のことを覚えてくれているのは嬉しいけど、
あの頃のように私を好きだということもない。
だって私はただの友達なんだから。
「久しぶり。陸」
なるべく陸の顔を見ないように
言葉を返す私に、陸は言った、
「なんだよ。
暗いじゃん。どうした?」
どうしたって、
あんたのことで悩んでるのに・・・。
そう思うとなんだかもどかしくなって、
私は陸に向かって笑顔を作った。
「ごめん、ちょっと
忙しいからまた後でね」
「え・・・うん」
少し残念そうな顔をする陸に
背を向けて歩きだすと、
「陸~。今晩空いてる?」という
女の人の声がして、
それに応えるように
「空いてるよ」と返す陸の声がした。
そんなの聞きたくなくて、
私は思い切り耳を塞ぐと走ってその場を後にした。