ライアーピース
一日の講義が終わり、
自分の家へと向かう。
本当は歩夢のところに行くんだけれど、
陸のことが気になってそれどころじゃなかった。
しばらく一人になりたい。
歩夢からのプロポーズのことも、
陸の女遊びのことも、
全てが私の頭を悩ませる。
まあ、プロポーズなんて
幸せすぎるけど・・・。
ベッドに身を投げて
ふぅっとため息をつく。
このまま眠りたい。
全てを投げ出して眠りたい。
そんな気分に陥った時、
ケータイが鳴った。
「もしもし」
≪若葉?今家にいるの?≫
歩夢の声がした。
そうか、歩夢も帰ってきたんだね。
私は仰向けに寝そべって天井を見つめた。
あのプロポーズの日から、
私はなんとなく気まずさを感じていた。
歩夢は何事もなかったかのように
普通に接してくれるんだけど、
それが私のプレッシャーとなった。
嬉しいんだけど、答えを出せないでいる私を、
歩夢はどう思ってるんだろう・・・。
≪そっち、行ってもいい?≫
「あ・・・私がそっちに行くよ?」
≪女の子一人じゃ危ないからダメ。俺が行くよ≫
「ありがとう・・・」
電話を切ると、私はノロノロと
立ちあがって、財布とケータイを持って外に出た。
歩夢がくるなら、
何か買い物してこよう。
近くのコンビニに寄って、
おつまみと飲み物を買う。
お店を出て空を見あげると、
満月が光っていた。
月に向かって手を伸ばす私。
こうして見ると
月がすっぱりと手に収まってるみたい。
「綺麗・・・」
私が空を見あげていると、
後ろから誰かに抱きしめられた。