ライアーピース
Piece16
「う、産まれたぁー!」
「若葉、よく頑張ったな」
陸の結婚式から間もなく、
私は出産した。
「おめでとうございます。
元気な男の子ですよ」
「男の子かぁ」
歩夢は嬉しそうに楓を見つめる。
私が楓に手を伸ばすと、
楓はその指を小さな手で握った。
ああ、私と歩夢の赤ちゃんだ。
こんなにもあったかくて、
こんなにもかわいい楓。
私、こんなに幸せでいいのかな?
罰が当たりそうで少し怖い。
そんな私の嫌な予感は的中することになる。
*
「単身赴任?今度はどこに?」
楓にミルクを飲ませている時だった。
歩夢はスーツを脱ぎながら話し始めた。
「アメリカ。今度は1年か2年」
「えっ!?そんな急に・・・」
楓が生まれて半年が経った今、
歩夢は前より上の役職に就いたため、
出張が多くなっていた。
だけど、アメリカに
1年くらいだなんて初めて・・・。
不安そうな顔をした私に、
歩夢は優しく笑いかけた。
「ごめんな。大事な時に
一人にしちゃうけど、
出来るだけ早く帰るようにするから」
「うん・・・」
「楓~。ママと二人で
待っててな~?」
楓は歩夢の言葉が分かったみたいに、
笑い始めた。
その顔を二人で見ていると、
とても落ち着く。
楓がこの不安を取り除いてくれるかのように、
楓は笑い続けた。
そうしているうちに、
歩夢の出発の日が訪れた。