ライアーピース
Piece19
ただひたすら、
無心になって部屋を整理する。
大きなバックに必要最低限の荷物を詰め込んでいく。
「よしよし、ママがいるよ~」
ぐずり出す楓をあやして、抱き上げた。
部屋の中を一通り見まわす。
こんなに広い家に自分は住んでいたんだ。
歩夢と、楓と一緒に。
テーブルの上に置かれた紙に
サラサラと名前を書いて捺印する。
そうしてペンを置いて指輪をそっと外した。
「さよなら」
私は小さく呟くと、そっと家を出た。
*
「いたいた!若葉~!!」
「ごめん、遅くなっちゃった」
「全然大丈夫だよ。それより、
久しぶりね。こんな風に会うの」
「うん。ずっとメールだけだったもんね」
そう言って笑った先にいるのは由紀乃。
由紀乃は相変わらず可愛らしくて、綺麗だった。
その隣には中島の姿もあった。
中島は相変わらず私には厳しい。
今も中島は私を冷たい目で見つめるだけだった。
「大ちゃん、だめだよそんな怖い顔」
「あはは。いいよ、由紀乃。
私が悪いんだし」
中島を怒る由紀乃に笑ってそう言う私。
中島はすっと前に出て私と由紀乃の間に立った。
「不本意だけど由紀乃の頼みだから来てやったよ」
「う・・・。申し訳ない」
「なんでもいいから、早く行くぞ」
「「はーい」」
由紀乃と二人で返事をすると、
中島は車に私の荷物を詰め込んだ。