ライアーピース



文化祭翌日、イベントの後で
すぐに現実に引き戻される感覚、わかる?


みんな“文化祭”という目標を
失ってやる気ゼロの表情を浮かべる。


それは私も同じ。


正直今朝は起き上がれなかったもの。


まあ、色々あったから
学校に行きたくないってだけだけど。


とにかく今日も陸を迎えに行かなきゃ。


私が陸のところへ行くと、
案の定「お前は誰だ」って顔をしかめる陸。


私は西高に通っていることを説明して、
それから陸と一緒に家を出た。


重い足を引きずりながら
教室に入ると、みんながざわついていた。


「おはよう、ニノ」


「由紀乃・・・なんで皆騒いでんの?」


「ああ、そのことね!
 聞いて、転校生が来るんだって」


「・・・ここに?」


「そう、このクラス!!」


転校生かぁ。


そういえば去年と同じようなことを
繰り返してるようだ。


あの日、陸が転校してきた
ちょうど同じ時期に転校生。


「女の子かなあ?男の子かなあ?」


由紀乃がニコニコしながらそう言う。


でも私はそれどころじゃない。


昨日の“唯”って子、
昨日はあれからずっと陸と一緒にいた。


何を話していたんだろう。

何をしていたんだろう。


この先、どうなってしまうのだろう。


そう考えると少し不安で、怖い。


「はいはい、皆座ってー。
 転校生を紹介するぞ~」


先生が黒板に名前を書く。


その文字に私は、1人唖然とした。


「はい、入って」


廊下から出てきたのは・・・。






「初めまして。三浦唯です」





「あ!唯ちゃんじゃ~ん♪」


歩夢が早速立ちあがる。


ああ、そういえば
昨日も唯ちゃんって呼んでたっけ。


そうよ。そもそもこいつが
陸を連れてこなきゃこうはならなかったはず。


思い出すと腹が立ってきて、
理不尽にも歩夢の席を蹴飛ばした。


「なんだよ若葉」


「うるさい。黙れ」


「なーんだよ、
 そんなキレんなって!」


歩夢がそう言うと、唯と目が合った。


唯は私を見て嘲るように笑うと、
静かに自分の席に座った。



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