ライアーピース



放課後、
私はF組まで陸を迎えに行った。


「陸!今日部活休みだから一緒に―」



帰ろう・・・。
そう言おうとしたのに・・・。


「ああ、二宮若葉ちゃんや。
 どうしたん?」


「どうしたって・・・
 陸を迎えに・・・」


「悪いんやけど、今日からうち、
 陸と一緒に住むことになったから、


 後は全部うちに任せてくれへん?」


「えっ・・・」


「そういうことだから、 
 お前は気を付けて帰れよ?

 唯、行こう」


「ほな、また明日~」



唯が私に向かって手をひらひら振った。


しばらく廊下の真ん中で立ちすくむ私。


この雑踏の中、私の頭の中で
記憶が目まぐるしく映し出される。


「あ、あれ・・・?
 なにこれ・・・」


ツーっと、
頬を熱いものが零れ落ちた。


それが涙だと気づくのに
そう時間はかからなかった。


どうして私は泣いてるの?


どうしてこんなに苦しいの?


陸は一部分だけだけど、
記憶が戻ってきてるんだよ?


嬉しいことじゃない。


それなのに、なんで・・・。



「はは。おっそいなあ。
 私って。バカみたい・・・」





やっと、やっと気づいたんだ。





『若葉』


『陸』


『若葉』


『陸』




私の声と陸の声が、頭の中に響く。


私は気づくと屋上に向かって走っていた。


重たいドアを開け放って屋上に出ると、
そのまま泣き崩れた。





ねえ、陸。私気づいちゃったの。



この胸の中にある感情に。





私は、私は・・・。




「陸―!!!」




好きなんだ。陸のことが。





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