ライアーピース
悲しみは、
ふとした時にやってくるもの。
それは人それぞれの感覚から成るもので、
同じ“悲しみ”なんてない。
だけどその悲しみに
寄り添うことくらいはできる。
その悲しみも、
突然音もなくやってきた。
いつものように男子たちに交じっていると、
先生が勢いよく教室に入ってきた。
慌ててゲームや漫画、
ケータイを隠す生徒たち。
先生は迷いもなく
私たちの輪の方へと歩いてきた。
なんだろう、
深刻そうな顔して・・・。
先生は私を、
ううん。陸を見て口を開いた。
「佐々木、
落ち着いて聞いてくれ」
「えっ?」
「お前のおばあさんが、
亡くなったそうだ」
「は・・・?」
誰もが耳を疑った。
周りが一気に静かになる。
とは言っても、
本当にそうなったわけではない。
私の中の時が止まっただけ。
ふと我に返ると、周りは
何事もないかのようにざわついている。
「陸・・・・」
「ばあちゃんが・・・死んだ?」
この状況を一番
受け入れられていないのは陸だと思ってた。
だけど違った。
一番、受け入れられていないのは私の方だ。
先生は深呼吸を一つすると、また口を開く。
「とにかく、一緒に病院に行こう」
「せ、先生!私もついて行きます」
咄嗟にそう言った私を見て、
陸が私を見つめた。
「二宮・・・」
「陸、1人じゃ不安でしょ?
私も一緒についていくよ」
「佐々木、どうする?」
「・・・二宮も、一緒に」
そう陸が言うと、先生は頷いて
私と陸を連れて駐車場へ向かった。