フェイク アフェア ～UMAの姫と御曹司～

二人が楽しそうに話しているのを見て嬉しくなる。

緊張状態から気持ちが緩んで空腹を感じてきた。

修一郎さんの袖をくいっと軽くひっぱり、「お料理をとってきていいですか？」と声をかけた。

「いいよ、俺がとってくるから。ノエルはここで圭介君と待ってるといい」

修一郎さんの過保護な返事に苦笑する。

「いえ、自分で行きますよ。ここから出ませんから大丈夫です」

「じゃあ一緒に行こう。圭介君も食べるだろう？３人でいた方が安心だ」

圭介も頷いて一緒に料理が並ぶテーブルに向かう。

「お前、どれだけ甘やかされてんだよ」

圭介が声を抑えて私に話しかける。
ずいぶんと呆れたような口調だけど、顔は和やかだ。
私は恥ずかしさで顔が少し熱くなる。

「まぁ、甘やかしてくれるって言うんだから素直に甘えとけ」
そう言って私の額をツンッとつついて嬉しそうに笑った。

「うん」と返事をしようとした時だった。

「あら、修と安堂のお嬢さま、こんばんは」

私たちのすぐ横から声がした。

振り向くと、そこにいたのはあの夜修一郎さんを送ってきた女性だった。

「片岡さん。あなたもいらしていたんですか」

修一郎さんは微笑みながら落ち着いた声で返している。よく見ると目は笑っていない。
この女性は『片岡さん』というのか。
今夜もずいぶんと色っぽい。

「ええ。父の会社に招待状が来ておりましたの。あら、ANDOの副社長さんもいらしたのね」

片岡さんは圭介に気が付いたようで、品定めするように上から下まで素早く目を走らせた。

「初めまして。私、片岡麻美。ジュエリー片岡の長女です」
ニッコリと微笑んで挨拶すると、ツカツカと圭介に近づいて来てコッソリと囁いた。

「あなたの妹さんの偽装婚約、早く解消していただけないかしら？私と修一郎との関係の邪魔なのよね。それとも、あなたが私と結婚する？あなたもまぁまぁよね」

それだけ言うとうっすらと妖艶に微笑みサッと身を翻して近くの談笑しているグループの輪に入って行った。

隣にいた私には彼女の話がほぼ聞こえた。
なんて人だろう。
私は彼女に対して嫌悪感がこみ上げる。