フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~

5-3

いつの間にか眠ってしまっていた。

目を覚まして2つ恐ろしいことに気が付いた。

まず、ここはどこだろう。
車内ではない。どこかの部屋。
実家でも私が知っている元林さんの部屋でもない。

そして覚醒した時に感じる頭の芯から感じる重さとだるさ、そして頭痛、喉の渇き、しびれたような感覚。
間違いない。私は薬を投与されて眠らされたということ。
この感覚を私は知っている。
ストーカー事件の後、ショックで不眠症になりしばらく精神安定剤や睡眠薬を飲んでいたから。
その使用感に似ている。

眠らせたのは元林さんなんだろうか?
あの時の苦いコーヒーに入っていたの?

どうして気が付かなかったんだろう。

本家の車が故障していても元林さんの私用車で安堂家の社長夫妻がパーティーに送迎されるなどありえない。
他の高級な社用車やハイヤーなどいくらだって手配できるのだから。
ましてやCRV車など着物の母が乗るはずがない。

ここはあの車内ではない。私はソファに寝かされふわふわの毛布でくるまれている。
でも、身体はどこも拘束されていないし、着衣に乱れもないようだ。
目だけで当たりの様子をうかがう。


「お嬢さま、お目覚めですか」

ギクッとして声のする方を見ると向かいのソファに元林さんが座っていた。

「ここはどこ?」

私は身体を起こそうとしてやめた。恐ろしいほど身体がだるい。

「お嬢さまはいつでも私のところに逃げ込んで来てもいいんですよ」

私の質問に対する答えはしないつもりか。

「なに?それどういう意味なの?」

「いいえ、まだわからなくてもいいです。お嬢さまの当面の居場所はここです。もう無理して辛い思いをして暮らす必要はないですから。安心して今は私のところにいればいいんですよ」

「元林さん、何を言っているのかわからないんだけど」

私はいつもの調子で話をするよう気を付けた。
落ち着け、落ち着け私。

元林さんはいつもと変わらない笑顔を私に見せている。

でも、私を拉致しているってことで間違いはないだろう。
心臓の音が聞こえそうなほどドキドキし始める。

まさか、こんなことが私の身に起こるとは。
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