フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~

「お嬢さま、お手をどうぞ」
いつもの笑顔の元林さんに支えられて身体を起こした途端、ひどく頭痛がしたけれど、自分でボトルを開けてごくごくと飲み干した。

あのコーヒーにはどの位薬が入っていたのだろう。ひどく眠くだるい。頭が働かない。

「もう少し寝てもいい?」

こめかみを押さえて聞くと

「ゆっくりお休み下さい」と優しい声で返事があった。

それから、お腹が空いていないかと聞かれ、ないと答えるともう休むようにと毛布を掛けられ毛布の上からポンポンと優しく子供をあやすような大きな手が肩のあたりに落ちてきた。

それはあまりにもいつもの元林さんで。

これは本当に誘拐とか拉致とか監禁ではないのかな?と疑問を感じたけれど、もう瞼を開けていられない。

私の意識は暗く深い闇に落ちていった。





次に目が覚めると私はベッドで寝ていた。
あのそのソファがあった部屋じゃない。

傍らには私と手をつないだ状態の元林さんが床に座り頭をベッドにくっつけて眠っている。

手をつないだっていうより私が元林さんの手を握りしめているって感じ。

うーん、やっぱりこれは一体どういう状況なんだろう。

身体を動かさないようにしながら自分の状況を確認。
ドレスからスウェットに着がえをしている?
元林さんが着がえさせてくれたんだろうか。
…。
身体に違和感はない…。
何も。

ん?あれは昨日ってことでいいのかな?
ずいぶんよく眠っていたような気がするけれど。

頭痛はずいぶんよくなっていた。
頭が少し重い程度で、睡眠薬もしくは精神安定剤のようなものが身体に残っているような感じはない。

薬はほとんど抜けたようだ。


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