フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
私の存在が他人の人生を変えてしまったのか。
以前は自分の存在がいけないことだったのだと思い詰めてしまったけれど、その考え方は間違っていると圭介や元林さんが根気よく私と話をしてくれたことと、修一郎さんが私に寄り添ってくれたおかげで自己否定をしなくなっていた。
でも、心の奥深くに太い杭を刺されたような嫌な気持ちが溢れてくる。
弁護士と警察官が帰ってからも私は顔を上げることができずにいた。
私を誘拐しようとした犯人は捕まり、私の身の安全が確認されたことで、元林さんのご実家の持ち物だというこの別荘の窓は開け放たれ、冬だというのに暖かく澄んだ風が部屋の中にも流れ込んできている。
「実家に届いていたエルの盗撮写真も春日母親の仕業だとわかったって。これで犯人がわかったから、安心しろよ。もうエルは自由なんだ」
圭介がそう言い、窓からの風が私の頬をなでていくけれど、私の心は晴れない。
「もう隠れて暮らさなくていいのに浮かない顔だな」
「だって・・・そんなに簡単な話じゃないもん。喜べないよ」
「お嬢さまのせいではありません。仮にお嬢さまが春日と出会ってなかったとしても、別の女性が春日に同じことをされていたことでしょう。ですから、お嬢さまが気に病む必要はありません」
元林さんは優しく私の方をポンポンとなだめるように触れて、私は隣に立つ元林さんを見上げた。
「そ、そうなのかな。私はこれで解放されたのかな。もう自由になっていいのかな」
優しく頷く元林さんをみて私も口角を上げた。
「そっか」
頬にあたる風は暖かく心地よい。窓から見える空は青く高い。
窓辺に近づき深呼吸をしてみた。
久しぶりに肺に新鮮な空気が流れ込んできたような気分になる。
終わった。
本当に『安堂ノエル』に戻る時が来た。