フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
「いや、如月コーポレーションよりもANDOの方がかなりすごい企業グループだよね」

そう私の目を見て如月先生はゆっくりと言った。

私の全身が総毛だった。
この人、知ってて言ってる。ケイの事だけじゃなくて多分私のことも。
身体の奥底から血液が逆流するような感覚と息苦しさ。
思わずカウンターにいるケイに助けを求めるように視線を向けてしまった。

しまったと思ったけど遅かった。

「やっぱりか」
私の視線の先を確認した如月先生は頷いて言った。

「私、ちょっとお手洗いに」

この場にはいられない、震える身体と声に気づかれないようにゆっくりと立ち上がろうとした。

「絵瑠ちゃん、今夜は落ち着かないわね」
朋美先輩がふふっと笑った。

「ははっ、すみません」

仮面のような笑顔を張り付けて「行ってきます」と言うと、隣に座っていた如月先生が顔を近づけて私にだけ聞こえる声で囁いた。

「ノエルさん」

その声を聞いた途端、目の前が真っ暗になって視界がなくなった。
私はふらつき、意識はあるものの近くのテーブルにぶつかってしまい床に右膝をついて座り込んでしまった。


この人は私のことを知っている。
大きく心が揺らいだ。

私がテーブルにぶつかった大きな音でケイがカウンターから飛び出して来て、座り込んで震えている私を人目もはばからず抱き寄せるように支えてくれる。

「大丈夫か、エル、どうした?」

「絵瑠ちゃん」
朋美先輩も由香里先輩も心配して立ち上がる。如月先生も。

「気分が悪い?診ようか?」
如月先生のひと声に鳥肌が立つ。

イヤだ、怖い。来ないで。
私はギュッと目を閉じた。
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