フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
「大丈夫か?」
ケイは私の肩を抱いて自分の身体に引き寄せた。
「うん、ゴメン」
「如月コーポレーションの息子と何かあった?何か言われたのか?」
井原さんと同じ質問だった。
「ケイも如月先生を知っていたの?」
私は顔を上げた。
「ああ。初めは見たことがあると思っていただけだった。だけど、井原さんから如月コーポレーションと聞いて思い出したよ。あいつ如月の次男だよな」
「・・・そっか。そうなんだ」
「何があったんだよ」
私はチラッと井原さんを見た。
「・・・エル、大丈夫だ。井原さんは信用していいと思う」
えっ?
「でも・・・」私は言いよどんだ。
「井原さん、まだお時間ありますか?よろしければ俺のマンションに寄って行って下さい」
待って。ケイ、何を言っているの?
私は呆然としてケイの顔を見た。
「大丈夫だ、エル」
「私が伺ってもいいんですか?」
助手席の井原さんがこちらを振り返った。
「ええ。ぜひ」
ケイが答えた。
私はケイが何を言おうとしているのかわからず戸惑った。
私が黙っているうちに車は私がケイと住んでいる高層マンションに着いてしまった。
「エル」ケイに促されて部屋に向かった。
3人とも無言だった。
ケイが鍵を開けて玄関に入り私を見た。
パチッと視線が合いケイの瞳の奥の感情を受け取り、私は仕方なく頷いた。
「どうぞ」
来客用スリッパを出して井原さんに勧めた。
「いいんですか?」
「ええ、どうぞ」
井原さんをリビングに案内する。
そこは明らかに私とケイが一緒に暮らしている事がわかる雰囲気。
シックな色の家具に棚に置かれた経済誌と医学雑誌。
床にはふわふわモコモコとしたクッション。
オレンジと白のガーベラの花が飾られている。
男女の趣味が混在したような空間。
井原さんはぐるっと視線を動かしたけど、何も言わなかった。