フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
「で、如月さんは何を言ってきたんだ?エルが取り乱すようなことだったんだろ?」

井原さんをソファーに誘導してすぐにケイに問われて、井原さんをチラッと見た。
井原さんは黙って私とケイの様子を見ていた。その様子に面白がるような表情は見られない。

「エル。井原さんは信用していいと思う。俺は井原さんと何回か仕事の関係で会っている。井原さんの態度はいつも冷静で公正だ。
俺が夜は勉強のために出してる店にいると聞いて、今夜もきてくれた。で、少し話をしていたってわけだ。
如月コーポレーションの次男が何を考えてるのかわからない状況である以上、井原さんはこちら側に付いてもらっている方がいいと思うんだ」

ケイの真剣な言い方と瞳の奥の光を見て私は心を決め頷いた。

「・・・『ノエル』って」

「如月先生は私に向かって『ノエル』って言った」
私はケイに向かって小さな声で告げた。

ケイはやっぱりかというように頷いてため息をついた。

井原さんは無言で不思議そうに首をかしげている。
井原さんは『ノエル』が何を意味するのかわからないようだ。やっぱり彼は何も知らないらしい。

私がじっと井原さんの様子をを見つめると、硬い表情のまま口を開いた。

「・・・『ノエル』とは何のことでしょうかと伺ってもよろしいですか?」

「エルの本名は『安堂ノエル』私の双子の妹です」

私の代わりにケイが答える。

「え?妹さん?」

そこは気が付いていなかったらしい。
驚いている井原さんに嘘はないようだ。

私はかけていた縁の大きなメガネを外し、さらにダークブラウンのカラーコンタクトレンズを外した。
ウィッグも外して、頭を軽く振って中から出てきたライトブラウンの髪を手ぐしで梳いた。
そして真正面から井原さんに『安堂ノエル』に戻ってみせた。

「私たちは双子といっても二卵性なので一卵性のようにそっくりというわけじゃありません。
私たちの母方の祖母が外国人で。私たちはいわゆるクォーターです。
私は日本人の父にそっくりでぱっと見は外国人の血が流れているようには見えませんが、ノエルは母方の血が濃かったみたいです。
瞳だけでなく髪の色素も薄く細く柔らかいので、ただの日本人の『桐山絵瑠』になるにはカラコンだけでなくウィッグも必要でした。本当なら外国人に見せて過ごした方がよかったのかもしれませんが、ナースとして働くには外国人では目立ってしまうので」

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