フェイク アフェア ～UMAの姫と御曹司～

「驚いた。絵瑠さん、かなり美人だとは思っていたけれど、変装したクオーターだったのか。しかも安堂さんの妹さんだったとはね」
井原さんは私の頭の先から足先までまじまじと見つめている。

び、美人って。

「あ、あの。そんなに見られると恥ずかしいんですけど・・・」
私は困ってしまいすがるようにケイを見た。

ケイは仕方ないって顔をして井原さんに向き直った。

「井原さん、エルの仮面を脱いだノエルはかなり人見知りで臆病なのでそのつもりでお手柔らかにお願いします」

「え？あ、ああそうなんだ。わかった」
井原さんは首をかしげてから表情を緩めてニコッと笑った。

「よろしく、安堂ノエルさん」

差し出された井原さんの右手を見て、どうしようかなとためらったけれどそっと握り返すと思ったより大きくて温かくてかなりホッとした。

そんな私の様子を見ていたケイは私の頭をポンと触った。

「エル、井原さんにはあの話をしようと思う。辛かったら自分の部屋に入っていていいから」

「何で？どうしてそこまで？」

私を見るケイの目は優しいけど私は戸惑って眉間にしわを寄せた。

「さっきも言ったけど、味方は多い方がいい。井原さんはノエルの敵じゃない。そうですよね」
ケイは井原さんに笑いかけるけれどその目は私を見る目と違って笑ってはいない。

井原さんは困ったような顔をしながら
「どんな話なのかわからないから断言できませんけど、もちろん安堂さんの信頼にお応えできるように努力します」
と言葉を濁した。

それはそうだ。
私は下唇を噛みしめた。
怖い。私は膝の上で握っていた手をさらに力を込めて握りしめた。

「でも、ノエルさんの敵になるつもりはありませんよ。ノエルさんの嫌がることもしたくない」

そう言うと私の顔を見ながら優しく笑った。

私はそこで初めて正面から井原さんの顔をしっかりと見た。

ホントだ、朋美先輩の言う通り、井原さんはかなりイケメンだ。

意志の強そうな眉と瞳。すっきりとした顔のライン。私の兄の圭介もかなり整った顔をしているけど、全くタイプが違う。
年齢も私たちより6歳上で大人の雰囲気が漂う井原さんに比べて兄は年齢より少し若く見られることが多い。私はそこからさらに幼くみられるのだけれど。