フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
私の頭をポンポンとすると口を開いた。

「ノエルちゃんに過失はないよ。ちっとも悪くない。だから、日常生活を取り戻す戦いをしよう。圭介君と俺が必ず助ける。君を守るから」

私は顔を上げて井原さんの顔を見た。

「頼ったら迷惑じゃないですか?」

井原さんは笑った。
「とんでもない!一生に一度くらいお姫様を守ってみたいと思っていたからね」

「私はお姫様じゃないけど・・・でも助けて。お願い」

今度は素直に頭を下げることができた。井原さんに何もかも吐き出してしまって、私に残された道は素直になることだった。


「早速、作戦開始だよ。よろしくね、婚約者殿」
井原さんは私の左手を持ち上げると軽く口づけた。

ひゃっ

変な声が出てしまい、井原さんに笑われる。

「これからは婚約者だから、少しスキンシップにも慣れてね。公には政略結婚だと思われるだろうけど、あまりにもよそよそしいとあきらめの悪いどこかの社長令嬢が俺たちの仲に横やりを入れて破談にしようとするからね」

「ええ?」

「そんな汚い世界だよ。だから多少ぎこちなくてもいいから仲良さそうにしていてね」

そうなの?そんなにあきらめが悪いの?。でも、そうなのかもしれない。
井原さんのカッコよさは尋常じゃない。
その上、肩書もある。

「私は高校に進学した頃から実家の事業とは一線を置いていたので・・・そっちの世界のことはよく知らなくてごめんなさい」

「ああ、それで」
井原さんは頷いた。

「ANDOには適齢期の御曹司だけじゃなくて社長令嬢もいるって噂はあったんだけど、彼女のことは誰もよくわからなくてその令嬢は『UMA』扱いだったんだよね。『UMA』って何のことかわかる?未確認生物のことなんだけど」

井原さんはニヤッとした。
そ、そんなこと言われてたのか・・・。
『UMA』なんて雪男とかチュパカブラとかもしくは『UFO』と同じような扱いじゃないの。

「何だか微妙な気分です・・・」
私は肩をすくめて少し笑った。
< 33 / 142 >

この作品をシェア

pagetop