フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
舞台から下りて修一郎さんが笑顔で私の元にやってくると、
「ノエル、行くよ」
小さな声で私に言って腕を差し出した。

私は彼の腕をとり、そっと腕を絡ませた。

2人で舞台に上がりお辞儀をする。
女子社員の悲鳴は拍手にかき消されていたけれど、チクリと胸が痛む。

ANDOとの業務提携の発表に続けてANDOの娘との婚約発表にその上専務から副社長に昇進。
まさに政略結婚。世間一般に2人の間に愛はありませんよと公表しているようなものだ。

「ノエル、笑って」
耳元で修一郎さんが囁いた。

そうだ、私は私の仕事をしなくては。
2人の間に愛があるふりをしなくては、修一郎さんに群がる他の女性を撃退できない。

「はい」

隣に立つ修一郎さんを見上げて精一杯微笑んだ。

修一郎さんは私の左手を持ち上げて指輪にキスをした。
私は笑顔で応える。

会場からはまた女子社員の悲鳴が聞こえた。

修一郎さんは私の腰に手を回して密着してきた。
ん?さすがにこれはやり過ぎじゃないの?と思っていると、司会者から修一郎さんにマイクが渡された。

「この度、私にはもったいない程の良縁を得ることができました。これからは愛する彼女の為にもさらに尽力していくつもりです」と挨拶すると私の頬にちゅっとキスをした。

えええー!
キスしました?こんなところで?

「はい、うつむかないで。笑顔、笑顔」
と囁く修一郎さん。

無理です!恥ずかし過ぎます。

真っ赤になり、横目で修一郎さんを軽く睨むと修一郎さんは笑った。

「ごめんね、ノエル。緊張をほぐそうかと思ったんだけど逆効果だった?」

悪びれない修一郎さんに私も思わず笑ってしまった。
それ、どんな作戦ですか。
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