フェイク　アフェア　～UMAの姫と御曹司～
「待って。あの、ありがとう。でもいいの。犯人探しならしなくてもいいの」

「どうしてですか。こんなにヒドいことされて。それにまたされるかもしれないですよ」
沙絵さんは納得できない様子だ。
そうなんだけど…

「私のことが憎くて堪らない程修一郎さんの事が好きなんでしょうね。好きな人にいきなり婚約者だって女が現れて、しかも会社絡みの政略結婚みたいって聞いたら、それは誰だって辛いわよね」
私はうつむきため息をついた。

「そんなことありません！専務と安堂さんはとてもお似合いだし、政略結婚だなんてはじめは確かにそんな噂がありましたけど、専務と安堂さんの様子を見た今は誰もそんなこと思ってませんよ。仮に政略結婚だとしてもこんな嫌がらせが許されるわけありません」

沙絵さんは目をうるうるとさせている。

「早く専務に連絡しましょう」

ああ、この子、本当にいい子だ。

「ありがとう。そう言ってもらえるだけで嬉しいわ。でも、修一郎さんにはまだ言わないで」

「どうしてですか。」

「修一郎さんがこれを聞いて、仕事の途中で帰ってきちゃったら困るでしょ。それにこんな天気じゃ今日はもう飛行機がとばないかも。それなのに、こんな話を聞かされたら修一郎さんが困るだけ。私は無事だったからいいの。沙絵さんにはこうやって迷惑かけちゃったけど」

私は両手を合わせて「お願い」と言った。

「そんな…。言わない方が専務が心配するかもしれませんよ」

「うん。ちゃんと後で言うから大丈夫」

沙絵さんが安心するように微笑んだ。


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