フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
2人で暮らすマンションに戻って来て玄関を開けると、2人で生活しているいつもの匂いがして嬉しくなった。
「修一郎さん」
靴を脱いでいる修一郎さんに声を掛けた。
「うん?どうした?」
不思議そうに振り返る修一郎さんに話しかけた。
「修一郎さん、お帰りなさい!」
うん、やっぱり修一郎さんだ。修一郎さんが帰ってきた。
いつもの感覚にホッとして大きく息を吸い、笑顔を見せた。
そんな私に修一郎さんは驚いたようで
「あれ?ノエル、もしかして・・・淋しかったとか?」
クスっと笑って冗談めかして聞いてくる。
「うん、淋しかったです。すごく」
私は即答した。
素直に答えたのに、修一郎さんからの返事がない。
少しむっとして、修一郎さんの顔を見上げると本当に驚いた顔をしていた。
パチッと目が合い
「驚いたな。ノエルの口からそんな言葉が出るとは思わなかったよ」
と照れたような嬉しそうな顔をした。
修一郎さんはギュッと私を抱きしめて離れると笑顔を見せて「嬉しいよ」と私の額にキスをした。
初めのころは恥ずかしくて仕方のなかったキスが今では自然で心がほわっと温かくなる。
「私は修一郎さんが無事に帰って来てくれたことがうれしいですよ。すぐにご飯の支度をしますね」
パンプスを脱いで廊下を歩いていると
「ノエルはさっき大ケガをしそうな程の大変な目に遭ったのに、もう通常運転なの?」
修一郎さんの怪訝そうな呆れたような声がした。
「さすがに私はお腹がすきませんけど、修一郎さんの夕食はしっかり作りたいし、早く休んで欲しいんですよ」
3日間の出張に悪天候の中の移動、帰社した途端の私の騒ぎ。
修一郎さんは今日もどれだけ疲れただろう。
「ノエル、とりあえずゆっくりお風呂に入っておいで。食事の支度ははその後でいいし。軽くつまむくらいにしよう。アルコールを飲みたい気分なんだ」
修一郎さんは穏やかな笑顔を見せてくれた。
「おっと、電話だ。じゃ、ノエルは風呂に行けよ。今日は会社でシャワーを浴びたらしいし」
笑いながら胸元からスマホを取り出して、自分の部屋に入っていった。
いつもなら私の前で電話を受けることもあるのに、そうしなかったということはさっきの樺山さんの件なのだろうか。
私に聞かれたくない電話ならなおのこと私は浴室に行っていた方がいいだろう。
素直にお風呂に入った。