フェイク アフェア ～UMAの姫と御曹司～

「修一郎さんは私の人生を取り戻そうと言ってくれました。私のストーカーに比べたら女同士の嫌がらせなんて大したことじゃありませんでしたよ」
ふふっと笑った。

私が今ここで怖かったと泣きだしたら修一郎さんが更に責任を感じてしまう。ただでさえ、こんなに落ち込んでいる様子なのに。

それでも肩を押されて階段から落とされそうになった時には、私も一瞬ダメかと思った。
でも、そこにいないはずの修一郎さんが私を掴んでくれた。

「落とされそうになった時はさすがに焦りましたけど。でも、修一郎さんが助けてくれたじゃないですか。大丈夫ですよ。私は無事でしたから」

私の胸元でうなだれている修一郎さんの頭をそっと撫でた。

「ストーカーから守ると言っておいて、このざまだ。ストーカーは関係なく俺のせいでノエルを傷付けるところだった。俺は俺を許せない」
うなだれた修一郎さんの口からもれる苦しげな声に私も切なくなる。

「今回のは私が勝手な行動をしたせいですよ」

「いや、俺のせいだ」

修一郎さんは自分を許せないらしい。頭も上げないし、私が否定しても自分を責める事をやめない。

これじゃ埒があかない。

はあっとひと息ついて一気に言った。
「じゃあ、婚約も同居も全て解消しましょうか？」

修一郎さんはがばっと頭を上げた。

「ノエル。今、何て」

「公に婚約破棄を発表して同居を解消しましょう。私は実家に戻ってストーカーが動き出すのを待ちます」

修一郎さんに笑顔を向けた。

「どうして、そんなに話が飛躍するんだよ」

修一郎さんが珍しく焦っている。

「だって、修一郎さんが自分を責めるから」
私は口を尖らせた。

「それはそうだろ。ノエルを守ると言っておいて、自分の女性問題に巻き込んだんだから」

「え、修一郎さん、樺山さんとそういう関係があったんですか？」

「は？いや、ないよ。そういう意味じゃなくて。樺山はあっちが勝手に妄想してただけで、俺は仕事上の付き合いで何回か食事をしただけだから」

「やっぱり、個人的に何も無かったわけじゃないんですね」
少しショックを感じる。
「だから、そうじゃないって」

「だったら何もそんなに自分を責める必要はないでしょ。私は修一郎さんに助けてもらいました。これでよしにしてもらえませんか？普段、迷惑をかけているのはどう見ても私ですよ」