フェイク アフェア ～UMAの姫と御曹司～

「修一郎さんの縁談よけに関してももう私じゃなくてもいいみたいだし」

「それは昨日修一郎君を送って来たっていう女のこと？」

私は頷いた。
「彼女、修一郎さんは自分と結婚するはずだって言っていましたよ。そういう方がいるのなら私は早く出て行かないと申し訳ないです。昨日だって彼女を追い出すような真似をしてしまって。私が出て行かないと行けなかったのに」

「その人は本当に自分と結婚するはずだって言っていたの？」

お義兄さんは不思議そうな顔をした。

「はい。間違いありません」

「おかしいな。そんな相手がいたら僕が知らないわけないのに。その人が勝手に言ってるだけじゃないのかな」

私はクスリと笑った。
「あんなに濃厚なキスをしているのに？」

「…ああ、あの口紅ね。あれは勝手にされたのかもよ」

「お義兄さん。もういいですよ。どちらにしても私には関係ありません。私たちは偽物の婚約者なんですから」

私の心は冷えていた。

そう、１０年前にもこんなことがあった。
あれから私はお金持ち達の世界が嫌いになって完全に離れたのに。
１０年振りに戻ってきてもこの世界は変わっていない。
愛理さんやお義兄さん、井原のお母様やお父様は大好きだけれど、やっぱり私はこの世界に馴染めない。

「実家かケイのマンションかどちらかに戻ります。どちらにするか考えたいので夕方までここに置いていただけますか？」

「ノエルちゃん、いきなりそんなことあの姉弟が納得すると思うかい？」

お義兄さんは心底困ったような表情を浮かべている。

「愛理さんはともかく、修一郎さんは納得しますよ」

「甘いなぁ。あの二人がキミのことを逃がすと思う？」

「愛理さんとは友人関係を続けます。私は大好きですし」

「修一郎君は？」

「・・・本当のお相手の方に失礼ですから」