フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
「ノエルちゃんはそれでいいの?」

いいも悪いもそれしかない。

「はい」

「ふうん。まあ、ノエルちゃんの思い通りにいかないとは思うけど、とりあえずノエルちゃんの話は聞いたからね」

佐々木さんは腕組みをして黙ってしまった。

どうにも居心地が悪い。

「あの、お義兄さん。今日は確か朝いちで修一郎さんはお仕事で取引先と約束が入ってましたよね」

「そうだけど、それは社長にお願いしたからノエルさんはご心配なく。その他の予定は午後にしてあるよ」

ええっ、お父様にっ?

私の顔色が変わったことに気が付いたお義兄さんは笑った。

「大丈夫だよ。息子の一大事だって聞いてお義父さんが自ら仕事を代わるって言ったんだから」

お父様は息子の二日酔いがそんなに心配だったんだろうか。
確かにお酒臭い人と取引しようなんて思う取引先もいないだろうけど。
さっき見た修一郎さんはひどい格好だった。
一緒に暮らしていてもあんな姿は見たことがない。

黙っているとお義兄さんの視線に気が付いた。

「珍しいよね。修一郎君のあんな姿」

「そうですね。驚きました。でも、いつもきっちりしすぎていたのかもしれませんね。私がいたからリラックスできなかったんでしょうね。申し訳なかったです」

「ノエルちゃんはあれをそうとっちゃうんだ?」

うん?どういう意味?
首を傾げたけど、お義兄さんはくすっと笑うだけでそれ以上の説明はなかったから私も追及しない。

「お義兄さん。ケイに連絡を取りたいので、私のスマホを取りに修一郎さんのマンションに行きたいんです。昨日何も持たずに出て来てしまったのでそろそろ出かけてもいいでしょうか?」

「ああ、んー、それは愛理がいいと言えばいいんじゃないかな」

「わかりました。愛理さんに聞いてみます」

ソファーから立ち上がると同時に修一郎さんと愛理さんがリビングに入ってきた。



< 94 / 142 >

この作品をシェア

pagetop