オトナの恋は礼儀知らず
 頭が痛い。

 痛いなんてもんじゃない。
 頭の中に金だらいを入れてそれをガンガン叩いてる人が頭に住んでる。
 それは………小人かな。

 二日酔いの思考回路はろくなもんじゃなくて目を開けたら、もっとろくでもなかった。

 誰か隣で寝ている。
 しかもどう見ても広い背中。

 自分に弟かお兄ちゃんでもいれば、酔って兄弟の部屋で寝ちゃったかーとでもなれるのに妹がいるだけだ。
 それも今では一緒に住んでいない。

 見たくない現実を消し去るために閉じたまぶたを今一度薄く開けて辺りを見渡した。
 薄く開けるだけなのは無駄な抵抗といったところだ。

 薄目でもハッキリと分かる知らない場所だということと、知らない場所なのにこの既視感。

 嫌な予感しかない。

 行きずりでホテル。
 この歳で……。

 いいえ。
 この歳だからこそ朝帰りを言い訳したり隠す親がいるわけじゃない。
 いいことじゃない。

 あるのはこの歳で朝帰りと知ったら両手を上げて喜ぶ両親だけ。

 絶対に知らせないでおこう。

 現実逃避をしていると隣の、男の人であろう体が「んー」と声を出した。

 知らん顔して帰っておけば良かった!

 今さら後悔しても遅かった。
 そして今さらながらに自分が何も着ていないことに気付いて顔から火を噴きそうだった。

 早急に上質な肌触りの布団を手繰り寄せ、とっくに手遅れに決まっている曝け出していた体を隠した。




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