オトナの恋は礼儀知らず
「父は性機能障害だったそうです。」

 それってつまり……。

 嘘。私と……どちらかと言えば年の割に旺盛な方で持て余しているくらいで……。

「性機能障害だったんです。
 友恵さんに出会うまでは。」

 目を伏せた舞さんからは、からかっているとは思えない真剣な声が響く。

 だいたい父の一周忌にこんな冗談を言う子じゃない。

「私に会うまでって。
 じゃ奥様とは………。」

「愛が無かったと前に話しましたよね?
 文字通り愛はなかった。」

「そんな………だってそんなこと一言も……。」

「父から手紙を預かっています。
 これに詳しく書いてあるみたいなので読んでください。」

「手紙なんていつの間に………。」

「2人が結婚して2、3年目の頃に渡されました。」

 そんな頃から手紙を………。
 だったらどうして生きているうちに話してくれなかったんだろう。

 舞さんは私がいると読みづらいでしょうからと片付けを済ませて帰って行った。

 帰り際に微かに聞こえた声は寂しそうな声だった。

「手紙を読んでもお母さんと呼んでいいと言ってくれるといいです。」


 どんな内容なのかと緊張しながら渡された手紙をまじまじと見た。

 手紙には『桜川友恵様』と書かれていた。
 桜川の部分をそっとなぞる。

 私には浩一さんであって桜川さんでもあって懐かしく感じた。

 手紙を開けると浩一さんの字が並んでいた。




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