私にとって初めての恋。

恋とテストと…

学校の大イベントの次は、中間テスト。
束李は美陽に縋り付いて泣いていた。

「美陽~…教えて~」

束李は赤点は取らないが、いつも赤点ギリギリセーフの点数だった。
美陽はその逆で満点に近い点数を取っていた。

「じゃあ、私の家で教えてあげるよ。明日から土日だし…泊まりでみっちりと…」

美陽は怪しい笑みを浮かべる。
集中力が長くは持たない束李にとって勉強会というのは酷なものだった。
中学の頃も、束李は美陽に叱られていた。
この時期になると束李の全身は何故か震えていた。
きっと美陽という名の「鬼」に怯えているのだろう…。
束李は泊まり道具を持って来ると言って、一旦美陽と別れた。
美陽は家に帰るなり、まず片づけを始めた。
束李の集中力を乱さないよう、雑誌やテレビ・ゲームをクローゼットの中に片づけた。

「これで…少しの間はいいかな」

自分の片づけ具合に少し納得して私服に着替える。
泊まりに来る束李の為、お茶菓子を用意する。
勉強の合間に食べる用に。

「夕飯の材料の確認しなきゃ…」

そう言って美陽は、パタパタと足音を立てて冷蔵庫の中を見た。

「よし、2人分ある!」

全ての準備と確認が終わり、後は束李を待つだけとなった。
家の中を美陽はうろうろする。
何もすることがなく、暇を持て余していた。
玄関とリビングを行ったり来たり…。
ついには部屋の掃除まで始めた。

「まだかな~…束李。家の掃除まで終わっちゃった」

美陽はボフンとソファーに座る。
美陽がソファーに座ったと同時に家の鐘が鳴った。
ピンポーン…
美陽は素早く立って玄関の戸を開けた。

「束李、遅いっ…よって…」

玄関を開けたら目の前に悠琉が立っていた。

「こ、こんにちわ~…」

悠琉の声は緊張しているのか弱々しかった。
その後ろからまた声が聞こえた。

「上田に誘われて来ましたー!」

と元気よく言うのは龍月。
その後ろから、束李の声がした。

「やほー、遅れてごめんね!!」

玄関の前で、悠琉、龍月、束李の順番で一列に並んでいた。
美陽は状況が整理できていないまま3人を家の中に上げた。
リビングで束李に話を聞く。

「あのね、先輩達も勉強会するらしく…美陽に黙って誘っちゃいました」

語尾に☆ミが付いていそうな言い方。
美陽は悠琉と龍月に聞こえないように束李に言う。

「連絡くらいよこしなさい!遅くなるとか誘うとか一言でもいいから!」

束李の頭に雷ではなく、美陽の拳が落ちた。
束李は半泣きしながら反省しているようだった。

「今、お茶入れて来るので先に始めててください」

美陽は悠琉と龍月にそう伝えて、自分はコップを4つ用意する。
悠琉と龍月はテレビを背に並んで座った。
束李はまだ頭を押さえていた。
美陽は3人の前に飲み物を入れたコップを置いて、自分の部屋に鞄を取りに行った。
悠琉と龍月は勉強を始めていたが、束李は教科書・ノート・問題集を開くこともなく、美陽が出した麦茶を飲んでいた。
美陽は鞄を束李の隣に置いた。

「さて、やるよ!束李!」

美陽はテスト用のノートに、テスト科目である教科書を机の上に置いた。
束李はコップをコースターの上に置いた。

「美陽、まず数学からお願いします…」

束李と美陽の勉強会は授業の復習から始まった…。
少しして美陽は壁に掛けてある時計を見た。

「あ…」

集中して気づきはしなかったが、勉強を始めた時間から数時間経っていた。

「少し、休憩しますか?」

美陽は話し合っている悠琉と龍月、答えを考えていた束李に言う。
束李は乱雑に教科書ノートをしまった。

「美陽ちゃん!お菓子!お菓子!!」

束李は机を煩いくらい何回も叩く。
美陽は束李を睨みつけた。
美陽の睨みだけで束李は静まった。
美陽は3人の前に作っておいたお菓子を出した。

「遠慮せず食べてください。束李は少し遠慮してね」

美陽は麦茶を空いたコップに注いでいく。
約10分の休憩を挟み、4人はまた勉強を始める。
束李は頭を抱えて後ろのソファーに横になった。

「美陽、また夕飯後にしない?」

今は夕方の4時、美陽は少し考える。

「じゃあ、お買い物付き合ってもらえるかな?」

美陽は寝転がる束李に聞いた。
束李は素早く起き上がって行くと答えた。
悠琉と龍月もついていくことになった。
4人は勉強を一旦中止して買い物に行くことになった。
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