私にとって初めての恋。
美陽は一足早く待ち合わせ場所に来ていた。

「あ、美陽ー!」
「束李!」

美陽の次に来たのは束李だった。

「先輩たちはまだ?」
「うん、まだ来てないみたい」

束李は手に持っていた大きな荷物を地面に置く。

「そっか、じゃあ待つか…。あ!ちょっと待ってて」

そう言って束李は荷物を置いてどこかに消えた。

「待っててって、先輩たちが来たらもう行くのに…」

美陽の独り言は夏の暑さの中に掻き消えた。
美陽は暑さに耐えられず日陰に入った。

「美陽!」

美陽は名前を呼ばれて声がした方を向く。
そこには龍月と悠琉がこっちに向かって歩いていた。

「先輩!!」

美陽は日陰から出て駆け寄る。
龍月はきょろきょろと周りを見渡した。

「葵井先輩?」
「龍月?」

美陽と悠琉がそろって首を傾げた。

「ああ、束李は?」
「あ、何か待っててと言って消えました」
「えぇっ」

荷物があるところで束李が戻ってくるまで3人は待つ。

「ごめん!遅くなった。あ、先輩!」

戻って来た束李の手はビニール袋を持っていた。

「束李、これなに?」

美陽が聞くと束李は汗だくで答えた。

「暑いと思ったから水とかお茶買ってきたの。もちろん皆の分!」

束李は持ち上げて手を下げた。

「ありがと、束李」
「ああ、ありがとう」
「んじゃ、行くか」

龍月と悠琉はなるべく軽い荷物を美陽と束李に渡して、重たい物や大きいのは自分たちが持った。

電車に乗ると束李がお菓子を開け始めた。

「美陽、あ~ん…」

美陽は束李に出されたお菓子を口にくわえた。

「先輩たちもどうぞ♪」

束李は龍月と悠琉に渡す。
しかし龍月はどこか拗ねているようだった。

「どうしたんですか、龍月先輩」
「俺にはあ~んってしてくれないの?」

龍月がそう言うと束李の顔が真っ赤に染まった。

「な、なに言ってるんですか!?」

束李も驚いたようで戸惑っているようだった。
その場は悠琉が龍月を止めておさまりはしたが、龍月は不満そうな表情を浮かべていた。
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