私にとって初めての恋。
見間違い、気の所為、勘違い。
先日からずっと頭の中で唱えている。
美陽は眠れなかったのか、目の下にクマが出来ていた。

「!?大丈夫、美陽」

束李に校門の前で会う。
束李は美陽の顔色を見て驚いたと同時に慌てた。

「美陽、とりあえず保健室に行こ?」

束李に保健室に連れていかれた。

「失礼しまーす」

声をかけても朝早くの保健室には誰もいない。

「美陽、少しの間ここにいな。ね?」

束李は心配そうな声を出す。
美陽は首を振って、

「大丈夫だよ、束李」

笑えていない笑顔を作る。
束李はそれを見て一瞬泣きそうになった。
束李は休み時間の度に美陽のところに来ていた。
教科の先生も心配しているようだった。

「美陽、何があったの?」

誰も近寄らない屋上付近の階段に2人はいた。
美陽は束李に「何でもない」の一点張り。
束李は信用せずに納得することにした。
日に日に美陽の顔色が悪くなる。
束李はもう我慢の限界だった。

「何があったの?美陽。抱え込まないで、ちゃんと話して」

美陽も限界だったのか静かに涙を流しながら束李に話した。

「雨が降っていたあの日、本屋にね先輩がいたの。同じ学校の女生徒と…。楽しそうに話してた。私は…っ、そこから、逃げることしか出来なかった…」

美陽の悲痛な声。
束李も寂しい気持ちになるのを感じた。
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