私にとって初めての恋。
「でも、見ただけなんでしょ?」

束李の問いかけに美陽はコクンと頷いた。

「それじゃあ、只のクラスメイトかもよ?」

美陽はまた頷く。

「知ってはいるんだけど、整理ができてなくて…」

束李は美陽の言葉を静かに待つ。

「何度も言い聞かせてるけど、それでも…っ」

1度止まった涙がまた流れる。

「確かめてみないことには何とも。だけど、美陽。これだけは忘れちゃいけない、先輩をちゃんと信じてあげて?別れちゃダメ絶対に」

束李がそう言い、2人は教室に戻った。
昼休み、最近の2人が使っている場所に束李は来なかった。
美陽はお弁当を手に持って束李を探した。

「あ、束李…」

美陽が束李を見つけたのは3年の教室前の廊下。
束李はこの前美陽が見た女子生徒と悠琉と話していた。
何か口論になっている。

「っ、束李!」

美陽は束李の名前を呼んでそばに駆け寄った。

「美陽!」

美陽はずっと俯いたまま束李の袖を掴んだ。

「やっぱり…」

美陽が何かを呟く。
それは誰にも聞こえないほどの大きさで。

「もう行こ、束李」

美陽は束李の袖を引っ張る。

「あ、美陽」

悠琉が美陽の名前を呼んだ。
美陽は立ち止まり顔も見ずに悠琉に言った。

「…さようなら」

美陽は涙を零さないように束李の手を引っ張って走った。

人気がなくなると美陽は束李に抱きついた。

「美陽…」

束李はどうすることもできない。
只ずっと美陽のそばにいた。
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