私にとって初めての恋。

冬とハル

未だに連絡が取れずにいる美陽と悠琉。
ストレスの矛先は別のところにあった。

「美陽…いい加減連絡したら?」

見ても分かる通り、束李は若干イライラしていた。
美陽はあの後、悠琉が屋上を出てから教室に戻った。
その事を放課後に束李に話した。

「名前呼ばれて嬉しかったんでしょ?だったら連絡しなきゃ」
「でも、今の時期って…」

そう、今は10月を過ぎての11月半ば。
既に3年生の受験は始まっていた。

「向こうだって美陽に会えなくて、美陽が足りなくて受験に集中出来てないかもしれないじゃん!」
「それはな…っ!」

いとは言いきれない、というか言い切りたくないと美陽は思った。
それでも、と美陽は言った。

「それでも、切欠がないと…」

美陽は目に涙を浮かべる。

「美陽、貴方はいつから泣き虫に?」
「元からです…」

美陽は涙を拭う。
束李は息をついて美陽に言った。

「私が龍月先輩に聞いといてあげる。勝谷先輩の受験日。その日の朝に連絡すればいい、メールはダメ。絶対に電話でね」
「あ、ありがとう…束李」

美陽に頼られるのも悪くないと束李は思った。
その日の夜、束李は龍月に電話をかけた。

『悠琉の受験日?』
「うん、美陽のために。何か知らない?」
『あいつの受験日は確か3月だよ。ていうかお前は?』
「え?」
『俺だって束李が足りないんですけどー』

拗ねたような口調で龍月は言う。

「龍月さん…頑張れ」

束李は頬を赤くして携帯を手から落とした。
向こう側の龍月もまた、顔を赤らめていた。
電話を切って美陽にメールで伝える。
心配そうな面持ちで束李は携帯の画面を見つめていた。
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