私にとって初めての恋。
「束李、ありがとね色々」

束李が学校に来て開口一番。
美陽はお菓子の包みを束李に渡す。

「え、どうしたの」
「私、諦めないで頑張ってみる。悠琉さんのこと…」

そう呟いて美陽はもう1つ包みを束李に渡した。

「これは?」
「葵井先輩の分。協力、束李が頼んだんでしょ?お詫びと感謝です。渡しといてくれると嬉しい」

美陽は少し束李から目線を逸らした。
束李は嬉しい気持ちでいっぱいになる。

「ありがと、お昼休みに早速…」
「分かった!」

美陽もいつもの笑顔を見せた。
それを見て束李は心のどこかで安心した。
お昼休みはバラバラで、美陽はこの前見つけた屋上の隅にいた。
束李は朝に言ってた通り龍月のところに行った。
1人のご飯は寂しくも清々しくあった。
美陽のご飯は手軽なサンドイッチ。
1口含んでゆっくりと噛む。

「うん、美味し」

定番からオリジナルまで作り、見た目は鮮やか。
どこかのシェフが作ったような完成度だった。
美陽は食べ終わると残った時間を図書室で過ごす。

「あ、続きが出てる」

学校の図書室には誰も借りないだろうという本までもが揃っている。
マニアにはとっておきの場所だった。
いつも座っていた窓辺の席に座って本を読み始める。
美陽にとってこの時間が今の至高の一時だった。
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