私にとって初めての恋。
神楽はお茶を飲んで帰って行った。
美陽は一緒に見送る束李に聞いた。

「束李は葵井先輩と回らなかったの?」
「3年生は受験がまだの人以外来てない」

束李が龍月に聞いた話によると、龍月は受験日が近いらしかった。

「なるほどね」
「だから美陽を誘うかと思ったら、全部に担当入れてるし。神楽さんも行く気なかったみたいだし…」

束李は拗ねたように言う。
美陽はクスッと笑ってごめんと謝った。
2人で校内に戻ると既に片付けが始まっていて、生徒会の方は後夜祭の準備をしていた。

「バンドのライブでもあるの?」

廊下の窓から見えたグラウンドの方を見るとステージが設置されていた。

「ああ、うん。軽音部とか募集かけてるの掲示板見たよ」

美陽の問いに束李が答える。

「あのね美陽…」
「ん?何?」

誰もいない静かな廊下。
束李が美陽に言った。

「また、一緒に登下校したり遊んだりしたい」

美陽だけでなく束李も、美陽と遊ばなくなり寂しく思っていたのだ。

「うん、私も!」

美陽は笑って頷いた。
束李はその場にしゃがみこんだ。

「え、どうしたの?」
「はぁ~…。安心したの」

緊張したと束李は叫ぶように言った。
それにまた美陽は笑った。

「次はクリスマス?」
「そうだね」
「4人で揃ったらいいね」

束李の言う4人とは、美陽、束李、龍月、悠琉のことだ。
そこに美陽が付け足した。

「お母さん入れないと拗ねる…」
「そ、そうだね」

束李は今日の事が十分なトラウマになったようだった。
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