私にとって初めての恋。
連絡を取れば簡単なこと。
そんなことは美陽にも分かっていた。
ただ体が反応しないだけで。
美陽はもう悠琉の邪魔だとか気の所為などは考えていなかった。
考えているのは自分から離れるという選択肢だけ。
耳の端でバンドの音が聞こえてくる。
美陽にとってこの気持ちは初めてのもので、戸惑うことが多かった。

3年生が卒業するまで3ヵ月とあと少し。

美陽はまだ決断できていなかった。
別れる理由よりも楽しかった思い出や嬉しかったことの方が思い浮かぶ。

「どうしたら…」

か細く呟く美陽の傍にいることしか束李にはできなかった。
悠琉の知らないところが多すぎる。
そう言えばあまり話してないことも思い出す。

「何も知らない…」

その事実がまた美陽の胸をしめつけた。
話さなくなってから何度も連絡を取ろうとしてはやめて。
アドレスだけは消すことはできなくて…。
美陽が一人ぐるぐるしている間に、束李は龍月に助けを求めていた。
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